・・・取残された僕は力味んではみたものの内内心細かった、それでも小作人の一人二人を相手にその後、三月ばかり辛棒したねエ。豪いだろう!」「馬鹿なんサ!」と近藤が叱るように言った。「馬鹿? 馬鹿たア酷だ! 今から見れば大馬鹿サ、然しその時は全・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・一本の指で引けと教えられたのに、内内二本の指を掛けて、力一ぱいに引いて見た。そのとき耳が、がんと云った。弾丸は三歩ほど前の地面に中って、弾かれて、今度は一つの窓に中った。窓が、がらがらと鳴って壊れたが、その音は女の耳には聞えなかった。どこか・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・それはいいね、ところで実は今日はお前と、内内相談に来たのだがね、どうだ頭ははっきりかい。」「はあ。」豚は声がかすれてしまう。「実はね、この世界に生きてるものは、みんな死ななけぁいかんのだ。実際もうどんなもんでも死ぬんだよ。人間の中の・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
出典:青空文庫