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・・・いったい甲音と乙音とが接続して響く際われわれ人間の内耳の微妙な機官に何事が起こってその結果われわれの脳髄に何事が起こるかということについては今日でも実はまだよくわかっていないのであるが、ただ甲が残して行った余響あるいは残像のようなものと、次・・・
寺田寅彦
「連句雑俎」
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・・・それを強いて空間的感覚にしようと思うと、ミュンステルベルヒのように内耳の迷路で方角を聞き定めるなどと云う無理な議論も出るのである。 お松は少し依怙地になったのと、内々はお花のいるのを力にしているのとで、表面だけは強そうに見せている。・・・
森鴎外
「心中」