・・・全体が冗長すぎるばかりでなく、画面の推移の呼吸がちっとも生きていない。 もろ子がかんしゃくを起こして猿を引っぱたくところだけが不思議に生きている。前編でも同じ人が弟の横顔をぴしゃりとたたくところも同様に、ちゃんと生きた魂がはいっている。・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・国語の柔軟なる、冗長なるに飽きはてて簡勁なる、豪壮なる漢語もてわが不足を補いたり。先に其角一派が苦辛して失敗に終りし事業は蕪村によって容易に成就せられたり。衆人の攻撃も慮るところにあらず、美は簡単なりという古来の標準も棄てて顧みず、卓然とし・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・即ち表現の上に叙述的な冗長は斥けられ、単純化はその必然的な方法となる。文学的行動主義が、造型芸術における野獣派、ピュリズム、プリミチヴィズム、シムルタニズム、表現主義或いは超現実主義の表現方法に多くの近似を見出すのはその故である。行動主・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫