・・・日本が出兵していたころ、御用商人に早変りして、内地なら三円の石油を一と鑵十二円で売りつけた。一ちょうの豆腐を十五銭に勘定した。ロシア人の馬車を使って、五割の頭をはねた。女郎屋のおやじになった。森林の利権を買って、それをまた会社へ鞘を取って売・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・共同出兵と云っている癖に、アメリカ兵は、たゞ町の兵営でペーチカに温まり、午後には若い女をあさりにロシア人の家へ出かけて行く。そこで偽札を水のように撒きちらす。それが仕事だった。而もその札は、鮮銀の紙幣そっくりそのまゝのものだった。出兵が始ま・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・ けれども、どうしたのか、兵は、却って隣国の者に追いまくられ、散り散りばらばらになってしまったので、また、二度目の出兵が必要になった。ところが、その二度目も負けて、三度四度と、兵隊のたくさんが出されたが、どうしても勝てない。そして、とう・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・これが満蒙出兵だそうです。すると、猿は、虎、狼などが集まっている国際連盟にかけつけて、告げ口をしている。しかし、蟹は眼尻をつりあげて柿の木の下にがん張っています。その絵のところにはこう書いてある。「昔の猿蟹合戦では、子が仇をうった。・・・ 宮本百合子 「「モダン猿蟹合戦」」
出典:青空文庫