・・・最後にダンチェンコのために宴会をやるつもりだから出席してくれろという事と、それから物集の御嬢さんを、自分がいなくなったら托したいという二件を依頼した。それで分かれた。 最後に逢ったのは、出立の数日前暇乞に来られた時である。長谷川君が余の・・・ 夏目漱石 「長谷川君と余」
・・・演説をやらんで何を致しますかと伺うと、ただ出席してみんなに顔さえ見せれば勘弁すると云う恩命であります。そこで私も大決心を起して、そのくらいの事なら恐るるに及ばんと快く御受合を致しました。――今日はそう云う条件の下にここに出現した訳であります・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・け、あるいは訳書の不足する所はしばらく漢書をもって補い、習字・算術・句読・暗誦、おのおの等を分ち、毎月、吟味の法を行い、春秋二度の大試業には、教員はもちろん、平日教授にかかわらざる者にても、皆、学校に出席し、府の知参事より年寄にいたるまで、・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・この度はシカゴ畜産組合の顧問として本大祭に御出席を得只今より我々の主張の不備の点を御指摘下さる次第であります。一寸紹介申しあげます。」とこう云うのでありました。私たちは寛大に拍手しました。 マットン博士はしずかにフラスコから水を呑み肩を・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・配給と買出しにしばられて、会合に出席する時間さえもてないでいる主婦たちの毎日が、どんなに凌ぐに張合あるものとなって来るだろう。大小の軍需成金たちは、戦時利得税や、財産税をのがれるために濫費、買い漁りをしているから、インフレーションは決して緩・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
いよいよきたる十二月十日から一週間北京でアジア婦人大会がひらかれます。そして日本からもそこに出席するために代表がえらばれました。これは現代の人類の歴史にとって深い深い意味をもつ新事実です。 世界地図をひらいて、アジアを・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・ 太田は別に思案もないので、佐佐に同意して、午過ぎに東町奉行稲垣をも出席させて、町年寄五人に桂屋太郎兵衛が子供を召し連れて出させることにした。情偽があろうかという、佐佐の懸念ももっともだというので、白州へは責め道具を並べさせることにした・・・ 森鴎外 「最後の一句」
・・・栖方の学位論文通過の祝賀会を明日催したいから、梶に是非出席してほしい、場所は横須賀で少し遠方だが、栖方から是非とも梶だけは連れて来て貰いたいと依頼されたということで、会を句会にしたいという。句会の祝賀会なら出席することにして、梶は高田の誘い・・・ 横光利一 「微笑」
・・・それでこの後には時々、たぶん月に一度か二度ぐらいは出席するようになった。 漱石を核とするこの若い連中の集まりは、フランスでいうサロンのようなものになっていた。木曜日の晩には、そこへ行きさえすれば、楽しい知的饗宴にあずかることができた・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
・・・同僚の教師たちがなまけて顔を出していないような席にも、規定とあれば先生は必ず出席せられた。何かの式であるとか、学友会の遠足であるとか、すべてそうであった。そばから見ていると、あれでは窮屈でとても永続きはしまいと思われた、というのである。この・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫