・・・父母たる者が之に財産を分与するは、我愛女に衣食を豊にして夫婦の礼を知らしむるの道なりと知る可し。但し婦人に財産を与えても自から之を処理するの法を知らざれば、幾千万の金も有て無きが如し。既に之を所有すれば其安全を謀り其用法を工夫し、世間の事情・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・非常な富豪とか、又、一部の交際社会、所謂派手者の間では、親から財産を分与され、二十一で、お雛様のような結婚をする男もないではありません。 けれども、多数を占めている中位の青年男女は、結婚の問題が起った時、果して自分等は自立して、一箇の家・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・四肢に集注されていた生活力は頭脳に分与されました。賢こくなった人間、豊富になった筈の人間精神の明確なるべき今日の人の多くがそれなら、果してひたすら発育して自己の肉体、精神の内感のみによって、宇宙に満ちる時の推移を直感するほど、深刻であるでし・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫