・・・ 今はもうその時の実感を呼び起すだけのナイーヴな神経を失っているし、音楽でも聴かぬ限り、めったと想いだすこともないが、つまらない女から別れ話を持ち出されて、オイオイ泣きだしたのは、あとにもさきにもこの一度きりで、親が死んだ時もこんなにも・・・ 織田作之助 「中毒」
・・・ とんだ責任だ。別れ話だの何だのと言って、またイチャつきたいのでしょう? ほんとに助平そうなツラをしている。」「おいおい、あまり失敬な事を言ったら怒るぜ。失敬にも程度があるよ。食ってばかりいるじゃないか。」「キントンが出来ないかしら・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・陽子は結婚生活がうまく行かず、別れ話が出ている状態であった。「あああ、私も当分ここででも暮そうかしら」「いいことよ、のびのびするわそりゃ」「――部屋貸しをするところあるかしらこの近所に」 ふき子は、びっくりしたように、「・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
出典:青空文庫