・・・ と女の顔を瞻れる、一眼盲いて片眼鋭し。女はギックリとしたる様なり。「ひどく寂しゅうございますから、もう一時前でもございましょうか」「うん、そんなものかもしれない、ちっとも腕車が見えんからな」「ようございますわね、もう近いん・・・ 泉鏡花 「夜行巡査」
・・・改革の後も役夫・職人の輩はただちに国事にかかわることなく、議員の種族はいぜんたる旧の議員にして、ただこの改革ありしがために、早くすでに議員に戒心を抱かしめ、期せずしておのずから下等の人民を利したりという。 ゆえに政府たる者が人民の権を認・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ また、物を盗み人を殺す者といえども、自から利して自己の平安幸福をいたさんと欲するにすぎず。盗んでこれを匿し、殺して遁逃するは何ぞや。他の平安幸福をば害すれども、おのずから害するを好まざるの証なり。また、いかなる盗賊にても博徒にても、外・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・の評論、新女大学の新論は、字々皆日本婦人の為めにするものにして、之を百千年来の蟄状鬱憂に救い、彼等をして自尊自重以て社会の平等線に立たしめんとするの微意にして、啻に女性の利益のみに非ず、共に男子の身を利し家を利し子孫を利し、一害なくして百利・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫