・・・十九世紀に大芸術家、科学者、政治家を輩出させた社会の創造的可能性は、その矛盾の深まるにつれてしだいに萎靡して、二十世紀前半は、ほとんどあらゆる分野においてその解説者、末流、傍系的才能しか発芽させえなかった。十九世紀は、その興隆する資本主義社・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・大岡昇平、火野、林などの作家にふれた前半と後半とはばらばらで、きょうの日本とその人民が歴史的におかれている大きい背景をもって諸作品が有機的に評価されるためには何かが足りなかった。 創作の方法は、世界観から規定されると云われたのは一九三〇・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・評伝は十二月初旬小説が終ってから再びつづけて、前半のように緻密にして生活的であり、生活と芸術とその歴史性の掘下げでユニークなものを完結します。小説もそのように生活のディテールと活力の横溢したものにしたいと思います。「乳房」を書いているから、・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・(今日は前半を書いた日から五日経った三月二十五日です。ひどいひどい風。空にはキラキラ白く光る雲の片が漂って、風はガラス戸を鳴らしトタンを鳴らし、ましてや椿、青木などの闊葉を眩ゆく攪乱『中央公論』の「乳房」は伏字がなくてうれしゅうござ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・の犯罪性を指摘するなら、人民階級の独裁ということと、金と権力をひっくるめて独占するということとの間にあるちがいについても学ぼうとするだろう。――これはもとより、わたしが「道標」の前半を、どのように書くことができているか、ということについての・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 今年の前半は去年から引続き三鷹事件の公判が続くでしょう。この公判には組合の人々も都合して一人でも多く傍聴する必要があります。検事が不当な取調べをしたと云う事は公判第一日から五回迄の陳述の中に、ハッキリ述べられています。林弁護人の陳述の・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・ 題材主義に対する批判は、昨年から今年の前半にかけて各方面からとりあつかわれた問題であった。この段階は経過したものとして、今日作家が自身の成長としての変りを希うとき、自身のうちにどんな内的な契機がつかまれて行ったらいいのだろうか。 ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ 引続いて、文学と民衆、文学の大衆化の問題は、一九三七年の前半期に沢山の討論を招致したテーマであったが、ここに注目されなければならないのは、民衆というものを如何に見るか、という基本的な規定の点では、見解が四分五裂の観を呈したことである。・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・後篇の前半を占めるこの部分は地球の到るところで、分散させられながらよりよく生きようとして力をつくしているすべての人間の目に、希望とよろこびの涙を浮ばしめるのである。 観察力のすぐれた読者は、そして皮肉が人生に何事かを決すると思い違いをし・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・ 文学は脱世的なものであり得ないのだし、人生と歴史とにとって決して余技的なものではないのだから、青野氏の文章の前半は、現代日本の文学精神が、どこやらにまだ二葉亭四迷の時代の文化的業績評価の尾を引いているようで、今日に云われる一つの感想と・・・ 宮本百合子 「作家と時代意識」
出典:青空文庫