・・・あの前編前半のクライマックスを成す刃傷の心理的経過をもう少し研究してほしいという気がする。自分の見る点では、内匠頭はいよいよ最後の瞬間まではもっとずっと焦躁と憤懣とを抑制してもらいたい。そうして最後の刹那の衝動的な変化をもっと分析して段階的・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・は、フランス文学の中でのデエヴィッド・カッパアフィルドと云われている作品であるけれども、この忘れ難い小説の前編の中ごろ以下、サルランド中学校の若い生徒監としてプチ・ショウズが経験する野蛮と冷酷と利己の環境は、とりも直さずプチ・ショウズととも・・・ 宮本百合子 「若き精神の成長を描く文学」
・・・それに前後編があって、前編は語を説明し、後編は文を説明してある。それを読んでいた時字書を貸して貰った。蘭和対訳の二冊物で、大きい厚い和本である。それを引っ繰り返して見ているうちに、サフランと云う語に撞着した。まだ植字啓源などと云う本の行われ・・・ 森鴎外 「サフラン」
出典:青空文庫