・・・という付け合わせが例句として引用されている。その前に「前句のすがたをうずたかく見いだしたる句に」という前置きがあり、後に「これ扇に夕がおのころならん」とある。「うずたかく」とはいかなる点をさすのか自分にはよくわからない。しかし、ともかく・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・とやけに桶をポンポンたたく。門の屋根裏に巣をしているつばめが田んぼから帰って来てまた出て行くのを、羅宇屋は煙管をくわえて感心したようにながめていたが「鳥でもつばめぐらい感心な鳥はまずないね」と前置きしてこんな話を始めた。村のある旧家・・・ 寺田寅彦 「花物語」
・・・そしてそれらの質問者は、発言に当って現に自分が労働者の中にあって文学指導をしている経験からおして、と前置きしていた。提案をうけもったわたしは、サークルと職場、組合などとの連繋は機械的には考えられない、政党や組合の活動が自由になったこんにちで・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
出典:青空文庫