・・・すなわち、子どもを哺育し、その世話をする労務にたえ得る母、その手のあれたるマリアでなくてはならぬ。何故なら愛は実践であり、心霊の清浄と高貴とは愛の実践によってのみ達せられるものだからである。 三 恋愛――結婚 恋・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・同日午後五時に、山本伯の内閣が出来上り、それと同時に非常徴発令を発布して、東京および各地方から、食料品、飲料、薪炭その他の燃料、家屋、建築材料、薬品、衛生材料、船その他の運ぱん具、電線、労務を徴発する方法をつけ、まず市内の自動車数百だいをと・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・昨今の工場では労務課がいろいろ苦心して講習会をやるが、その一つで詩吟の会だの剣舞の会だのというのがある。この間或る婦人雑誌で、百貨店の婦人店員たちが仕舞の稽古をしている写真も見た。 詩吟というものは、ずっと昔も一部の人は好んだろうが、特・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・活動に堪える力は最大まで社会のためにと、外の仕事に動員されるのだけれど、外の仕事ではつねに、いざとなると女はどうせ家庭に入る者だから、それが一番自然で貴重な女性の任務なのであるから、とたとえば肝心の労務委員会あたりも、女性の職場での福祉につ・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・ 経済再建のトップに立つ日本の紡績界の半封建のままの少女労働の搾取に対して、厚生省が、一、女工寄宿舎制度の撤廃、二、遠隔地からの女工員募集禁止、三、女子の就業率引下げと男子労務の増強、四、通勤による工員の確保、などを要望すると語られてい・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・職業紹介所は更に最近労務資源枯渇の現状に鑑み、銃後女子勤労要員制度というのを編み出した。十四歳から四十五歳迄の女子に三ヵ月ずつ期間を区切って午前十時から午後三時迄日給六拾銭で工場の労働をさせる。もともと家庭婦人の動員を眼目にしているから托児・・・ 宮本百合子 「働く婦人」
・・・昭和十四年までは労務動員計画と呼ばれていた労働力に対する統制が、十七年からは、国民動員計画と範囲を拡めた。徴用がどしどし行われるようになって、男子の就業禁止の職域範囲が拡がった。企業整備によって自分の店や勤め先を失った男達は、みんな徴用され・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫