・・・例えば大木の根を一気に抜き取る蒸気抜根機が、その成効力の余りに偉大な為めに、使い処がなくて、さびたまゝ捨てゝあるのを旅行の途次に見たこともある。少女の何人かを逸早く米国に送ってそれを北海道の開拓者の内助者たらしめようとしたこともある。当時米・・・ 有島武郎 「北海道に就いての印象」
・・・まっすぐに突きだす途中で腕を内側に半廻転ほどひねったなら更に四倍くらいの効力があるということをも知った。腕が螺旋のように相手の肉体へきりきり食いいるというわけであった。 つぎの一年は家の裏手にあたる国分寺跡の松林の中で修行をした。人の形・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・それが事件の直前にちょうどこの百貨店で火災時の消防予行演習が行なわれていたためもあっていっそうの効力を発揮したようであるが、あの際もしもあの建物の中で遭難した人らにもう少し火災に関する一般的科学知識が普及しており、そうして避難方法に関する平・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・もっとも割れ目の空隙が厚くなるほど、これを充填した血液の水分は蒸発し、有機物は次第に分解変化して効力を失うであろうから、やはり目に見えない程度の分子的な割れ目に対して最も効力を発揮するであろうと考えられる。 以上のスペキュレーションが多・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・それからまたそういう圧縮が可能となるための基礎条件として日本人のような特異な自然観が必要であること、なおその上に環境条件として古来の短詩形の伝習によって圧縮が完成され、そうしてできあがった語彙の象徴的効力がそれぞれに分化限定されたこと、それ・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・先生の方で全部装置をしてやって、生徒はただ先生の注意する結果だけに注意しそれ以外にどんな現象があっても黙っているようなやり方では、効力が少ないのみならず、むしろ有害になる虞がある。御膳を出してやって、その上に箸で口へ持ち込んでやって丸呑みに・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・それにもかかわらずこのような事が繰り返されていたとすれば、犬の糞の効力の及ばない場合が相当に多かったかもしれない。 これと同じ章に足を有った蛇の記載が出ている。多分鰐の事だろうが、その説明がかなり面白いものである。 ・・・ 寺田寅彦 「マルコポロから」
・・・の血圧分布の変化はまさにこれに当たるものであると考えられる。問題の「車上」の場合にはこの条件が充分に満足されている事が明白である。ただむしろ刺激があり過ぎるので、病弱なものや慣れないものには「車上」の効力を生じ得ない。この刺激に適当に麻痺し・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・ これらの弊害を別にしても、文芸院の建設は依然として文芸の発達上効力がある、即ちある種類の好い作物は出るに違ないと主張する人があるかも知れない。余はそういう人に向って、たとい日本に文芸院がなくっても好い作物は出るのだといいたい。かつて文・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・これは今までの作物に飽き足らぬか、もしくは、おれはおれだから是非一派を立てて見せると自己の特色に自信をおくか、または世間の注意を惹くには何か異様な武者ぶりを見せないと効力が少ないとか、いろいろの動機から起るだろうが、要するに模擬者でもなけれ・・・ 夏目漱石 「文壇の趨勢」
出典:青空文庫