・・・何てったって、化けるのは俺の方が本職だよ。尻尾なんかブラ下げて歩きゃしねえからな。駄目だよ。そんなに俺の後ろ頭ばかり見てたって。ホラ、二人で何か相談してる。ヘッ、そんなに鼻ばかりピクピクさせる事あないよ。いけねえ。こんなことを考える時ゃ碌な・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・すると高ちャんという子の声で「年ちャんそんなに打つと化けるよ化けるよ」とやや気遣わしげにいう。今年五つになる年ちャんという子は三人の中の一番年下であるが「なに化けるものか」と平気にいってまた強く打てば猫はニャーニャーといよいよ窮した声である・・・ 正岡子規 「飯待つ間」
・・・この上はどこまで化けるか分らぬ。どうか早く本体を顕して真人間に戻って貰いたいものだ」と評して居る。真人間のすきな人間氏よ、安心なさい。鏡花は完全に化けぬいた。ユニークな天才と化け得て一九二五年の文壇に生彩を放って居るから。 これにつ・・・ 宮本百合子 「無題(五)」
出典:青空文庫