・・・その半数が中毒にかかったわけである。切迫した国際情勢のために、着のみ着のまま出発して来た人たちで、心身の疲労はいちじるしかったと、それも不幸の一つの原因としていわれているが、もしそれがそんなにはっきり誰の目にも映じているとしたら、新鮮だと断・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
・・・これは自由党の当選者一四一人の殆ど半数が、そういう資本家たちで占められているということである。次に、「無職」というのが二十五名もいる。今のこの世の中で働かず稼がず無職で暮せているということは、その人々がわたし達の生活と全くちがう経済の足場を・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・すると、その半数は、失業している。資本主義のゆきづまりはひどくなるばっかりで、行手にあてのない世界四千万の失業者とその家族とが、目の前に餓死を眺めて坐っている。 云うに云えないそのプロレタリアートの苦しい有様を利用して、資本主義国では、・・・ 宮本百合子 「ひとごとではない」
・・・的なフェミニストとして女性を文学化し、チェホフにその婦人たちがこしらえものであることを批判されたが、ゴーリキイは以上の人々の誰ともちがい、勤労者らしい淡泊さと同時に現実を恐れない突き込みをもって大衆の半数を占めるところの女のさまざまの姿を描・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・現在われわれの棲んでいる世界には、自分の働きで生きてゆかねばならぬ女が何億人かあって、その苦痛こそは全く世界人口の半数を占める女の共通な苦痛の呻きではないであろうか。そのような人間として女としての苦痛の声は、文学に描かれるにふさわしくないも・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・ 熱心に書かれていると思いましたが、やはりまだルポルタージュというものと感想文というものとの区別が、書いている方自身にはっきりつかめていないのが半数を占めたのは残念です。 報告文学と感想文との根本的なちがいは、次のようなところにある・・・ 宮本百合子 「ルポルタージュの読後感」
・・・そして全人民の半数を占める日本の婦人も、過去の重い軛から解放されて、明るい希望のある社会建設のために、これまでかくされていた自分たちの力を発揮することの出来る時代になって来た。それにつけても、今日私達が残念に思うことは、わたしたちが勇気をも・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・中にはまかないの飯を食うのもあるが、半数以上は内から弁当を持って来る。洋服の人も、袴を穿いた人も、片手に弁当箱を提げて出て来る。あらゆる大さ、あらゆる形の弁当が、あらゆる色の風炉鋪に包んで持ち出される。 ずらっと並んだ処を見渡すと、どれ・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・丘を下っていくものが半数で、栖方と親しい後の半数の残った者の夕食となったが、忍び足の憲兵はまだ垣の外を廻っていた。酒が出て座がくつろぎかかったころ、栖方は梶に、「この人はいつかお話した伊豆さんです。僕の一番お世話になっている人です。」・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫