・・・二十頭が分泌した乳量は半減した上に更に減ぜんとしている。一度減じた量は決して元に恢復せぬのが常である。乳量が恢復せないで、妊孕の期を失えば、乳牛も乳牛の価格を保てないのである。損害の程度がやや考量されて来ると、天災に反抗し奮闘したのも極めて・・・ 伊藤左千夫 「水害雑録」
・・・そういうことの必要を思わぬこともないが、しかし窮屈な姿勢で読んだり、抜き書きしたりしておれば、読書のたのしみも半減するだろうと思われるのだ。たのしみと言ったが、僕は勉強のために読書することはすくない。たのしみのために読書するのである。だから・・・ 織田作之助 「僕の読書法」
・・・これがないと、散歩の興味、半減。かならず、電柱を突き、樹木の幹を殴りつけ、足もとの草を薙ぎ倒す。すぐ漁師まち。もう寝しずまっている。朝はやいのだから。泥の海。下駄のまま海にはいる。歯がみをして居る。死ぬことだけを考えてる。男ありて大声叱咤、・・・ 太宰治 「めくら草紙」
・・・ラジオによって全国に火事注意の警報を発し、各村役場がそれを受け取った上でそれを山林地帯の住民に伝え、青年団や小学生の力をかりて一般の警戒を促すような方法でもとれば、それだけでもおそらく森林火災の損害を半減するくらいのことはできそうに思われる・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ しかも、実際家としての母は未だ眠りきってしまわず、一九二九年の恐慌以来、母の収入をも半減させた世の中の変化については、敏感に反応した。そういう面での敏感さはいつしか母の好きな気位というものをも卑屈にさせた。 一九三二年に私が結婚し・・・ 宮本百合子 「母」
・・・その死亡率を半減された兵士たちの心からなる喜びの眼に彼女が天使に見えたのは自然だった。 けれども、この雄々しい活動の人を夜鶯め! と罵る人間もいた。その筆頭はスクータリー病院の院長ホール博士と連隊長連であった。女と戦争と何の関係があ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
出典:青空文庫