・・・「いいえ、軍人と子供は半額ですけど。」「軍人と子供? それは入場料ではないか。私はその山椒魚を買うつもりなんだよ。お金も準備して来た。」先生は大きい紙いれを懐中から出して火燵の上に載せてにやりと笑った。私はその顔を見て、なんだかまた・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・日本やアメリカなどの若い労働者のように、半額などということはないが、それでもいくらかやすかったのを、今度は、六時間労働でも、大人なみ八時間労働とまったく同じ賃銀を払うということである。男の子も女の子も十六七になれば、食べるものも着るものも大・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。すぐ振替えをとることが出来るのだそうだけれど、私たちは閃くような思いで、うちはどうするのだろう、と考える。先日の新聞には、月給百五十円の人の家計は昨今五十円ずつ足・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
・・・今に、ソヴェト同盟勤労者は、労働組合の手帳を見せて買う半額切符で楽しく映画を八万七百ヵ所で見ることが出来るのだ。 文化基礎が大衆的に、こう拡大してこそ、初めて輝しいプロレタリア芸術が花咲くのだ。 ソヴェト同盟の芸術家は、作家も俳優も・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 労働者は、組合からの半額切符で、メイエルホリド座へ行った。そしてマヤコフスキーの「南京虫」を見物したが、作者の諷刺と演出者の誇張しすぎて表現派風なこりかたは、民衆によくわからなかった。 リベディンスキーは、ロシア・プロレタリア作家・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・民法は、事情によって父親が受ける月給の半額までの扶助料を子供が十八歳になる迄支払う義務を決定している。 万一、男が更に非ソヴェト市民的で、扶助料支払いをいやがり、行衛をくらました時、例えばターニャはどうするか。彼女ひとりの収入ではとても・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・失業しないまでも賃銀半額に引下げられた労働者の暮しはどんなものか。その中で赤坊は産めないからというので、姙婦相談所へ出かけ、避姙を教わったり、人工早産して貰ったりする。 だが姉妹。目先の便利でゴマ化されるのはやめよう。プロレタリアート婦・・・ 宮本百合子 「「市の無料産院」と「身の上相談」」
・・・しかも実収入で半額まで女がこぎつけていることに、日々の努力が決してそれらの女性たちにとってかるいものではないこともまざまざ語られているのである。 若い婦人を働かせるために何の特別な設備もない重工業の部面に、どんどん未来の母たちが吸収され・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・何百、何千、何万の娘たちの給料の半額を会社で預って、預った金を一ヵ月間会社のために流用するなら、その金融的効力はどのくらいだろう。六年制の国民学校を出ただけの、子供のような女工さんには、こまかい話はしても判らない。会社は若い娘の夢をもたせる・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・けれどもそのおびただしい女のほとんど大多数は男の半額の賃銀で搾取されているだけで、選挙権などは持ってないのだ。 前列の机に両肱かけて坐っていた若い女が、 ――御覧! よこに並んでいる年上の仲間に、怒ったように低い声でいった。・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫