・・・ ところが、南禅寺でのその対局をすませていったん大阪へ引きあげた坂田は、それから一月余りのち、再び京都へ出て来て、昭和の大棋戦と喧伝された対木村、花田の二局のうち、残る一局の対花田戦の対局を天龍寺の大書院で開始した。私は坂田はもう出て来・・・ 織田作之助 「勝負師」
・・・因みに坂田翁が木村八段と対局した南禅寺の書斎には「聴雨」の二字を書いた額が掛っていたとのことです。 次にこの小説で「私」を出したのはどういう秘密かとのお問いですが、これはあくまで秘密として置きましょう。ただ、僕が「私」を出さずに、この小・・・ 織田作之助 「吉岡芳兼様へ」
・・・詩人では南禅寺の惟肖和尚が、二、三百年このかた、比べるもののない最一の作者とされている。平家がたりでは、千都検校が、昔より第一のもの、二、三百年の間に一人の人である。碁うちでは、大山の衆徒大円。早歌では、清阿、口阿。尺八では、増阿。いずれも・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫