博物局十六等官キュステ誌 私の町の博物館の、大きなガラスの戸棚には、剥製ですが、四疋の蜂雀がいます。 生きてたときはミィミィとなき蝶のように花の蜜をたべるあの小さなかあいらしい蜂雀です。わたくしはその四疋の中・・・ 宮沢賢治 「黄いろのトマト」
・・・こんな立派な火山弾は、大英博物館にだってないぜ。」 みんなは器械を草の上に置いて、ベゴ石をまわってさすったりなでたりしました。「どこの標本でも、この帯の完全なのはないよ。どうだい。空でぐるぐるやった時の工合が、実によくわかるじゃない・・・ 宮沢賢治 「気のいい火山弾」
・・・僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれで螫されると死ぬって先生が云ったよ。」「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さん斯う云ったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたん・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・いいや、そうじゃない、白堊紀の巨きな爬虫類の骨骼を博物館の方から頼まれてあるんですがいかがでございましょう、一つお探しを願われますまいかと、斯うじゃなかったかな。斯うだ、斯うだ、ちがいない。さあ、ところでここは白堊系の頁岩だ。もうここでおれ・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・の中には、女学校に入る娘を博物館の勤めさきまでつれて行ってやって算術の稽古をしてやっている父鴎外の姿が、溢れるなつかしさをこめて描かれている。従って、子供たちが、有形無形に父から与えられているものは、深く、しっかり根を張っているであろう。女・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ 十二日 博物館、展覧会、活動、 十四 グランパに招かれて若松から、リデムプションを見る。 十五 未来の仕事についての議論 十六 第三木曜会へ一緒に行く、寒い日、かえりに一〇丁目の角でお茶をのむ、始めて・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 彼は、印度人で、幼少の時から英国で教育され、今はボストン博物館で、東洋美術部の部長か何かをしながら、印度芸術の唯一の紹介者として世界的な人物になっているのである。 面長な、やや寥しい表情を湛えた彼が、二階の隅の、屋根の草ほか見えな・・・ 宮本百合子 「思い出すこと」
・・・ カールは朝九時から夕方七時まで大英博物館の図書館で仕事をした。エンゲルスの援助と、ニューヨーク・トリビューン紙から送られる一回僅か五ドルの原稿料が生活の資であった。五〇年五月にイエニーがワイデマイヤーに宛て書いた手紙はロンドンに於ける・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・科学者としての興味をひかれ、実験を試みたことから、幕末の平賀源内が幕府から咎めを蒙った事実も忘れ難い。科学博物館編の「江戸時代の科学」という本は、簡単ではあるが、近代科学に向って動いた日本の先覚者たちの苦難な足跡を伝えている一つの貴重な本で・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・昔の離宮が今は勤労者のための愉快な公園博物館として開放されている。景色のいい池の辺にある一つの旧宮廷用の小建物が図書館出張所になっていた。労働組合員は、身分証明の手帖で、ごくやすい保証金をおさめ、自由に本の借り出しをされる。わたしもそこで随・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫