・・・蹄の音に話声。危なく声を立てようとして、待てしばし、万一敵だったら、其の時は如何する? この苦しみに輪を掛けた新聞で読んでさえ頭の髪の弥竪そうな目に遭おうも知ぬ。随分生皮も剥れよう、傷を負うた脚を火炙にもされよう……それしきは未な事、こうい・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・廻す拍子に一度危なく取落そうとしてやっと取り止めた様子は滑稽であった。蜂はやがてこの団子をくわえて飛び出そうとしたが、どうしたのかもう一遍他の枝に下りた。人間ならばざっと荷物をこしらえて試みにちょっとさげてみたというような体裁であった。そし・・・ 寺田寅彦 「蜂が団子をこしらえる話」
・・・「何しろあの連中のすることは雲にでも乗るようで、危なくてしようがない」「ふみ江ちゃんが琴やお花のお稽古で、すましているものですから、先でも買い被っていたに違いないんです。東京へ言ってやりさえすれば、金はいくらでも出るようなことも言っ・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・そのぐらぐらはだんだん烈しくなってネネムは危なく下に落ちそうにさえなりました。「そら、網があったろう。そいつを空へ投げるんだよ。手がぐらぐら云うだろう。そいつはね、風の中のふかやさめがつきあたってるんだ。おや、お前はふるえてるね。意気地・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫