・・・長谷川静子殿長谷川柳子殿 遺族善後策これは遺言ではなけれど余死したる跡にて家族の者差当り自分の処分に迷うべし仍て余の意見を左に記す一 玄太郎せつの両人は即時学校をやめ奉公に出ずべし一 母上・・・ 二葉亭四迷 「遺言状・遺族善後策」
・・・ 四月二十日の各新聞によれば「内閣即時退陣せよ」と進歩党をのぞく四党代表者会議の決定が首相に示された。その席上で幣原首相は、私も自分の利益のために粘っているのではない、国を憂えることは諸君と同じだが、方法が違う、と意見を披瀝しはじめたら・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・葉で第四年目の三・一五を記念し、ブルジョア・地主のひどい政府が、どんなに党員たちを苦しめるか、死ねがしに扱うか、いやいや現に党員の誰とかを警察のコンクリートの床になげつけて殺した事実をあげて、政治犯人即時釈放を要求しました。監獄の病舎は、南・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・十九日の日本プロレタリア文化連盟拡大中央協議会は、開会、即時解散をくったが、文化団体として前例のない勇敢なデモが敢行され、新聞はトップ四段抜きでその報道をのせ、築地小劇場の会場が混乱に陥った瞬間の写真が掲載されている。警視庁特高係山口、明大・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・絶対反対の叫びを職場に、サークルにひろくひろく響かせ、前衛即時釈放の要求をつきつけなければなりません。そして、支配階級の立場の弱さをかくす為にされようとする統一審理廃止に対しては、どこ迄も統一審理を継続させるよう闘わなければなりません。・・・ 宮本百合子 「同志たちは無罪なのです」
・・・けれども、社会主義の即時断行というスローガンをかかげている日本社会党に、こういう「無職其他」が最も多いということは、なかなか意味深いことである。社会党が、勤労人民の味方のように演説をしながら、勤労人民の苦痛の原因となっている旧い日本の君主に・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・やはり立会演説の公開の席上で、社会主義即時断行と天皇制護持と、決して両立し得ない二つのことを並べて綱領としている一政党の立候補者、執行委員の某氏は、聴衆の面前で、個人としての見解は必ずしも自分の属す政党の意見とは一致していないが、党代表とし・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・ 数馬は傍輩の口から、外記が自分を推してこのたびの役に当らせたのだと聞くや否や、即時に討死をしようと決心した。それがどうしても動かすことの出来ぬほど堅固な決心であった。外記はご恩報じをさせると言ったということである。この詞ははからず聞い・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・ かくて某は即時に伽羅の本木を買い取り、仲津へ持ち帰り候。伊達家の役人は是非なく末木を買い取り、仙台へ持ち帰り候。某は香木を三斎公に参らせ、さて御願い申候は、主命大切と心得候ためとは申ながら、御役に立つべき侍一人討ち果たし候段、恐れ入り・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・ かくて某は即時に伽羅の本木を買取り、杵築へ持帰り候。伊達家の役人は是非なく末木を買取り、仙台へ持帰り候。某は香木を松向寺殿に参らせ、さて御願い申候は、主命大切と心得候ためとは申ながら、御役に立つべき侍一人討果たし候段、恐入り候えば、切・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫