・・・生産文学と呼ばれる作品が、何故今日、その隆盛のために却って一般の心に、文学とは何であろうかという本質的な反問を呼び醒ましつつあるのであろうか。「麦と兵隊」に、死んだ支那兵のポケットにまだ動いている時計を見つけた主人公が、それをそのまま元・・・ 宮本百合子 「生産文学の問題」
・・・といわせる力があっても、しかし読者を深く考えさせ、自分に疑問を持たせる、社会の進歩というのはどういうことなのかと反問させる力は絶対にない慰めによむ小説であった。こういうような性質を持つ菊池文学が愛されたのは当然のこと、従って菊池の常識性の反・・・ 宮本百合子 「“慰みの文学”」
日本は誰のものか。八月十四日の読売新聞で、吉田茂、馬場恒吾の対談の大見出しをみてはげしい反問を感じなかったひとは、一人もなかったろう。「日本の進路」について、何よりも先に「外国人の安住地に」と大見出しがつくような話をする一・・・ 宮本百合子 「日本は誰のものか」
・・・ 始めそのことを聞いた時、第一自分の胸に来たのは、何故それ程、生活方法を見出すのが困難なのかと云う鋭い反問でした。 一人の女性が、真実に独立の生活を営もうとすれば、方法などは、いくらもあると思われます。 第一、嘗て、小学校に教鞭・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・しかしながら、一般読者の胸の中には、折りかえして、では何故、現代の文学愛好者の大多数がそういう自他ともに低めるような情けない末技的興味にひき込まれてしまっているのであるかという反問が生じる。 明治以来今日までの七十年間、日本のブルジ・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 彼が反問した。「随分ひどいらしいけれども――樹だけはいいわね」「手を入れればよくなるさ。どうせ、そう万事よいと云う処はない。第一此処からだと、学校までたった二三分で行けるもの――」「――きめましょうか?」 彼は、又、ぶ・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・ゴーリキイの心には周囲の生活に対する切ない反問が生じた。「何のためにこれ等のすべてがあるのであろうか?」 この時代にゴーリキイは或る予期しないきっかけから当時ロシアに擡頭していた「人民派」の学生達と知り合い、その研究会へも出席するように・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫