・・・ 流布本太平記巻三十六、細川相模守清氏叛逆の事を記した段に、「外法成就の志一上人鎌倉より上つて」云とある。神田本同書には、「此志一上人はもとより邪天道法成就の人なる上、近頃鎌倉にて諸人奇特の思をなし、帰依浅からざる上、畠山入道諸事深く信・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・笠井さんだって、五、六年まえまでは、新しい作風を持っている作家として、二、三の先輩の支持を受け、読者も、笠井さんを反逆的な、ハイカラな作家として喝采したものなのであるが、いまは、めっきり、だめになった。そんな冒険の、ハイカラな作風など、どう・・・ 太宰治 「八十八夜」
・・・僕と菊代さんは、お前たちに叛逆をたくらんだが、お前たちは意外に強くて、僕たちは惨敗を喫したんだ。押せども、引けども、お前たちは、びくともしねえ。 だって、あなたたちは、間違った事をしているのですもの。 聖書にこれあり。赦さるる事の少・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ これに反してぐあいの悪い日は絵の具も筆も、申し合わせて反逆を企て自分を悩ますように見える。色が濃すぎたと思って直すときっと薄すぎる。直しているうちに輪郭もくずれて来るし、一筆ごとに顔がだんだん無惨に情けなく打ちこわされて行く。その時の・・・ 寺田寅彦 「自画像」
・・・その結果として、自然の充分な恩恵を甘受すると同時に自然に対する反逆を断念し、自然に順応するための経験的知識を集収し蓄積することをつとめて来た。この民族的な知恵もたしかに一種のワイスハイトであり学問である。しかし、分析的な科学とは類型を異にし・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・やっかいな癌腫はそういう反逆者の群れでできるものらしい。有機系とはなんの交渉もないものが繁殖し始めるとその有機系の調和が破壊され、その活力が阻害され結局死滅する、それと同時にその死滅を促成した反逆者の一群も死滅することは当然である。 国・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・ニイチェの意味に於ては、それがキリストに叛逆する標語であつた。あの中世紀の魔教サバトの徒は、耶蘇とキリスト教とを冒涜する目的から、故意に模擬の十字架を立てて裸女を架け、或は幼児を架けて殺戮した。反キリストの詩人ニイチェの意味に於て、Ecce・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・もし作者が一小学教師の煩悶、反逆を、野蛮な封建的絶対主義的抑圧と闘う労働者農民の立場に立って把握したならば、当然天使的な無邪気な子供というブルジョア的観念化からも救われ、佐田のイデオロギー的飛躍と実践とは、もっと質実な、納得のゆけるものとし・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・檄はマルクスと二人の同志とを叛逆罪として起訴する種に使われた。公判の結果、一同無罪となった。 これはイエニーにとって貴重な経験であった。良人カールとその同志たちの行動は「実に犯してよい行動、本来からいえばブルジョアジーの果すべき義務であ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 大変いわゆるお育ちのいい十六のジュヌヴィエヴが女性としての目ざめとともに、自分たちをとりかこむ綺麗ごとと表面の純潔でぬりあげた環境への反逆として、そういう観念の上での破壊を考えたことは分るとして、日本の、それも現実の波に洗われながら働・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
出典:青空文庫