この文芸評論集には、ごく最近に書かれた数篇と、いくらかさかのぼって一九四五年の十二月ごろから書かれた数篇とがあつめられている。おしまいに別に収録されているバルザック、ジイドに関したものは、それよりもっと古く一九三七年ごろ書・・・ 宮本百合子 「はしがき(『文芸評論集』)」
・・・選集第十巻に収録するためにこの文章をよみかえした。そして、作者と読者とのためにこんにちでは、短い附記の必要を感じた。川端康成は一九一四年ころから作品をかきはじめ、一九二二年「伊豆の踊子」によって、独特な抒情性のきよらかさと描写の美しい明瞭さ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・を収録した『太陽』増刊号の赤いクロースの厚い菊判も、綴目がきれて混っている。 こんな本はどれもみんな父や母の若かった時分の蔵書の一部なのだが、両親は、生涯本棚らしい本棚というものを持たなかった。その代り、どこの隅にもちょいちょい本を置く・・・ 宮本百合子 「本棚」
・・・一、もし文集として編集される見とおしがあるならば、わたしとしては、三篇五篇というなかには入らなかった記録のうちで、収録されたいものがあります。様々の生活のありかたを公平に照し出し、読者にそれについての省察を自由にして貰う条件をひろくする・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・ 頁数その他の関係から、この一冊には母が書きのこしたものの僅か五分の一を収録し得たに過ぎないのは残念である。 この家族的な雰囲気に満ちた文集『葭の影』一巻は、私達子等をよろこばせ、尽きぬ感想の源泉となるばかりでなく、五ヵ月の相違で、・・・ 宮本百合子 「葭の影にそえて」
出典:青空文庫