・・・ けれども、例え取材は古くても、性格、気分等のインタープレテーションに、或る程度まで近代的な解剖と敏感さを必要とする新作の劇で、彼等は何処まで女になり切れるだろう。 舞台上の人物として柄の大きいこと、地が男である為、扮装にも挙止にも・・・ 宮本百合子 「気むずかしやの見物」
・・・等は今野大力の一家の生活から取材されている。 七月十九日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 七月十九日 日曜日 午後四時 第三信 蝉の声がしている。ピアノの音がしている。 二階に上って来て手摺から見下・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・髪師、土工等あらゆる階級の人々にとっての文学表現の形式となり得ている、その様式の浸透を、窪田氏は超階級性と見ておられるのであるが、直ちに、作歌上からむずかしさのために過去の歌でさけられて来ている職業を取材したものの多いのは、現代の歌の特色を・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ この作品は、作者が年若い少女であったことと、その少女の生活環境にあわして社会的に積極的な取材であったこと、単純だが濁りのない人間感動などによって、その時代の文学に一つの話題となった。しかし、このことは、作者の生活を着実に大人の女として・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・にしろ、取材はわるくなく、細部にフレッシュなところがあるのに、全篇の印象が何故か読者の胸にぴたりとしないのはどういうものだろう。読んでゆくうちに心が吸いよせられ、アブゾーブされ切れない。或る点まで牽きよせられ、もう一つというところで何ともし・・・ 宮本百合子 「読者の感想」
・・・若し、私の貧しい洞察が許されるならば、その取材の変化は、貴女が芸術家としての内容を拡大させ、視野を広めて行かれようとする勇ましい努力の暗示であり、失敗は、それに伴わなかった、同じ内的な他の何ものかを暗示しているのではございますまいか。 ・・・ 宮本百合子 「野上彌生子様へ」
・・・の抒情的作風からはやい歩調で成長してきて、取材の範囲をひろめながら日本の繊維産業とそこに使役されている婦人の労働についてはっきり労働階級の立場から書きはじめている。彼女の筆致はまだ粗く、人間像の内面へまで深く迫った形象化に不足する場合もある・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・革命前から活動していた女流作家でシャギニャーンと云う人は、水力電気発電所に取材した小説を書いてレーニン賞を得ました。又もとのブルジョア作家も社会的に働き出して、男と同じ大きな取材にもドシドシ取り組んでいます。 要するに婦人作家の「不振」・・・ 宮本百合子 「婦人作家の「不振」とその社会的原因」
・・・ この作がプロレタリア文化団体に関する取材であるからといって、もしこの作を「友情」や「白夜」と同じ類型に属するものとすれば、それは、杜撰であろうと私は考える。 主人公の持つ方向と、作者の意企とは、それらの作品とむしろ対蹠的なものであ・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・が一九三二年の封建的軍事的絶対主義日本における階級闘争が帝国主義戦争によって一層切迫した現段階において、特に近づきつつある人民革命の歴史的意義を規定する明治維新から取材し現実の闘争のもっとも必要なモメントとして描かるべき歴史小説としては、方・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
出典:青空文庫