・・・彼の話は大部分新聞記事の受け売りらしかった。しかし幸い血のよりもロマンティックな色彩に富んだものだった。黄の平生密輸入者たちに黄老爺と呼ばれていた話、又湘譚の或商人から三千元を強奪した話、又腿に弾丸を受けた樊阿七と言う副頭目を肩に蘆林譚を泳・・・ 芥川竜之介 「湖南の扇」
・・・ この三郎の感傷的な調子には受け売りらしいところもないではなかったが、まだ子供だ子供だとばかり思っていたものがもはやこんなことを言うようになったかと考えて、むしろ私にはこの子の早熟が気にかかった。 震災以来、しばらく休みの姿であった・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・彼の会話の断片を基にしたジャーナリストの評論や、またそれの下手な受売りにどれだけの信用が措けるかは疑問である。ただ煙の上がる処に火があるというあまりあてにならない非科学的法則を頼みにして、少しばかりの材料をここに紹介する。 彼の人間に対・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ただ自分等より一年前のクラスで、K先生という、少し風変り、というよりも奇行を以て有名な漢学者に教わった友人達の受売り話によって、孔子の教えと老子の教えとの間に存する重大な相違について、K先生の奇説なるものを伝聞し、そうして当時それを大変に面・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・既得の知識を繰り返して受け売りするだけでは不十分である。宗教的体験の少ない宗教家の説教で聴衆の中の宗教家を呼びさます事はまれであると同じようなものであるまいか。 こんな事を考えるのはあるいは自分の子供の時に受けた「化け物教育・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・ブルジョア・ジャーナリズムのあれこれの作品について受け売り批評をすることでもなければ、口の先だけで民主主義文学創作方法あれこれをしゃべることでもないでしょう。毎日のテムポの早い内容の実に複雑な生活の上に起るさまざまの事件、さまざまの気持、さ・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
出典:青空文庫