・・・う言葉を、そのものだけで世間にばらまくので、わたしたちはまるで道ばたに焼跡があるように、そしてそれを見なれてしまっているように、自覚という言葉を聞きなれて、しかもほんとうのその内容を知らないまま、ただ口伝えに繰返していると思います。 自・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・彼等には文字がないので、昔からあった面白い歌も、口伝えに代々伝えられて来たのですから、忘れられたり、知っていた老人がなくなったりして歌の数もずっと減って了いました。その歌の節は内地の追分節によく似ていますが、元はアイヌの歌から初まったものか・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
・・・ 浦和、蕨あたりからは、一旦逃げのびた罹災者が、焼跡始末に出て来る為、一日以来の東京の惨状は、口伝えに広まった。実に、想像以上の話だ。天災以外に、複雑な問題が引からまっているらしく、惨酷な〔二字伏字〕の話を、災害に遭って死んだ者の他につ・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
出典:青空文庫