・・・ レーニンの弁証法に、ブハーリンの史的唯物論に、もとより真理のある事を否まない。且つ、科学的基礎のあることをば信ずる。たゞこれを漫然と繙くものに、いずこにか、ナロードニーキの運動を嗤う権利があろう? 現代は、科学的という言葉に、あま・・・ 小川未明 「純情主義を想う」
・・・かくして真の人間の立場から全体主義の人間倫理学がつくられて行くことが来たるべき史的展望ではあるまいか。 最後に倫理学の最も深き、困難な根本問題として「意志の自由」の問題がある。「意志の自由」とは普通には、行為の選択の自由のいいである・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・に讚歎するとき若い婦人たちはそれぞれの主人公たちの伝奇的な面へロマンティックな感傷をひきつけられ、科学というとどこまでも客観的で実証的な人間精神の努力そのものの歴史的な成果への評価と混同するような結果をも生むのである。 婦人の文化の素質・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・フランスの敗れた本質的な理由としてあげている幾つかの事情も、つまりは結果として現れた現象を並べているにすぎず、何故それらのことは起ったのかという大切な点について彼の記述は全く史的な洞察を欠いている。一九三五年の早春のパリ事件の本質が、フラン・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・ム否定論者として浪曼主義に賛成し、新感覚派の時代から自然主義的、現実主義的文学方法に絶えざる反撥をつづけて来た横光利一、川端康成、佐藤春夫その他、市井談議一般に倦怠し、同時にリアリズムを更に高めゆく歴史的努力への根気をも失いつつ時世の荒さに・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 民主日本への歴史的な転換は、当然文学にも新しい窓をひらいた。民主的な文学という欲求がある。しかし、今日のごく若い文学の働き手、または今日読者であるが未来は作家と期待される人々にとって、民主の文学といっても、なんとなしいきなりつき出され・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・大学にいる間、秀麿はこの期にはこれこれの講義を聴くと云うことを、精しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがある・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫