・・・ 偶然話の合間に云われた一語に執してものを云うとなれば意地わるのようでもあるが、それでも私には何だかこの若いひとの一語とそれの云われた態度とはつよい感銘であった。その人たちの帰ったあとも、自然いろいろ考えられた。 私たちの生きている・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・ マーニャは、ワルソーの市中をあちらからこちらへと家庭教師の出教授をして働く合間に、好学の若い男女によって組織されていた「移動大学」に出席して、解剖学、自然科学、社会学などの勉強をしました。そして、そこで学んだ知識をもって、工場に働いて・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ 合間合間に、小さい子供が一輪車に片脚をのせて転って行った。女の子達が、毬を持って、街路樹のかげで喋っている。子守女のぶらぶらする様子や、店頭でこごんでたたきを掃いている小僧の姿などが、一瞥のうちに、暖い私的生活の雰囲気を感じさせた。・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・それだもんで、喋っている一組の男の声だけがさっきから、車輪の響きや短い橋梁をわたるゴッという音の合間に私のところまで聞えて来るのである。「去年も五六人知ってる人が行ったですがね。去年行った衆はたいがいもう三十越したったが……、私もこんど・・・ 宮本百合子 「東京へ近づく一時間」
・・・そのほか、後できくと、その絵の師匠は、絵筆をとっている合間に、家をたててくれなどと云い出したので、母は警戒して絵の稽古もやめてしまったのであった。 そのことは、日本画家の一種の紊風を示す話でもあり、又母が実際家であって、利害を守るにも鋭・・・ 宮本百合子 「母」
・・・長椅子の上であえぎながら、彼女は報告を読み、手紙を口述し、心悸亢進の合間には熱病的な冗談をとばした。ナイチンゲールは、イギリスの陸軍病院の全組織の改善という大計画につかれているのであった。自分の体のままにならないフロレンスは間もなく自分の周・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・が『三田文学』に連載されやがて一般の興味をひきつけた時代には、そのエロティシズムも、少女から脱けようとしている特異な江波の生命の溢れた姿態の合間合間が間崎をとらえる心理として描かれており、皮膚にじっとりとしたものを漲らせつつも作者の意識は作・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・纏った建築が年に幾つかある合間を、暇すぎることもなく十五年近く住みついているのであった。 五年前、桜が咲きかける時分石川は予期しない建築を一つ請負うことになった。十五日の休みで、彼は家にいた。裏のポンプのところで、下駄屋の犬とふざけてい・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・ 月二ルーブリで、朝六時から夜中までぶっ通しに働かせられる合間、小学を五ヵ月行ったきりのゴーリキイは次第に本を読むことを覚え、プーシュキン、ディッケンズ、スコットなどを愛読するようになった。料理番スムールイが、ゴーリキイに目をかけ口癖の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・有名な十二月党の革命的計画についての調書の一部、処刑された数人の党員の写真、シベリアの流刑地で労役の合間に石に腰かけ、本を読んでいる人々の姿、この辺になって来ると、もう皆はさっさと室を通りすぎることは出来ない、一枚一枚の写真が、ロシアの革命・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫