・・・ つい先頃、後妻にいじめられ、水ものめずに死んだ石屋の爺さんが、七十六かで、沢や婆さんと略同年輩の最後の一人であった。その爺さえ、彼女の前身を確に知ってはいなかった。まして、村の若い者、仙二位の男達だって、赤児で始めて沢や婆さんの顔を見、怯・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・ 栄蔵は、自分と同年輩の男に対する様な気持で、何事も、突発的な病的になりやすい十七八の達に対するので、何かにつけて思慮が足りないとか、無駄な事をして居るとか思う様な事が多かった。「まあ飛んだ事呉(れた。 でも、まさか何ん・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ この評論家の文章は、おそらく彼と同じ程度の教養をもっている科学その他の専門分野の同年輩人をおどろかせる言葉だろうと思う。塩と水さえあれば、ともかく命がつなげる。人類の集落は、いつもきっとただの水のほとりにこそ原始集落をつくった。知識階・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 折々婦人作家たちが、こういう場面で日常の社会問題をとりあげ、女としての土台から直接な気持で批判を行っているのは、今日同年輩の男の作家たちの社会時評とは遠い生活態度と対比して、様々の感想を喚びさまされる。 その国の進歩的な婦人作家た・・・ 宮本百合子 「女性の教養と新聞」
・・・ 現在、壮年になっている作家たちが、他の職業にたずさわる同年輩の男の社会的・経済的地位を観察した時、作家生活の現実は、彼の内心を暖くするであろうか。冷たくするであろうか。 今日の社会的情勢は、日本のブルジョア作家の大部分がそこに属し・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫