・・・ただ一言いっておきたいのは僕たちは第四階級というと素朴的に一つの同質な集団だと極める傾向があるが、これはあまりに素朴過ぎると思う。ブルジョア階級と擬称せられる集団の中にも、よく検察してみるとブルジョア風のプロレタリアもいれば、プロレタリア風・・・ 有島武郎 「片信」
・・・ 豊吉は善人である、情に厚い、しかし胆が小さい、と言うよりもむしろ、気が小さいので磯ぎんちゃくと同質である。 そこで彼は失敗やら成功やら、二十年の間に東京を中心としておもに東北地方を舞台に色んな事をやって見たが、ついに失敗に終わった・・・ 国木田独歩 「河霧」
・・・の選定されるに到った動機には、同質ならざる二様の意図が作用していたと思われる。一つは、明治・大正・昭和に亙る聖代に日本古来の文学的様式である和歌の歩んで来た成果を収めて、今日の記念とする意味であり、他方には純粋に歌壇の歴史的概括としての集成・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・今われわれは、殆どこれと同質のところを四つ試掘中です」と云った。 バクーの油田は領域の広さ、量の豊富さばかりでなく、湧出する原油の質が多様な点でも、優れているのだそうである。 五 小道を下って、本通・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・にもられている希望と同質のものであろうか? 「ひかげの花」の二階生活にあるものをある種の希望と呼び得るならば、それは、そのようなものをさえなお人間生活の希望の部へ繰り込まなければならない社会の現実について憤りを禁じ得ぬ種類の、最も消極的幸福・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ブルジョア文学と民主的な文学の本質に立ったプロレタリア文学とはけっして同質の文学の両面ではなくて、プロレタリア階級が資本主義社会から発生してきた歴史的に新しいそして質のまったくちがった一階級であるのと同じに、プロレタリア文学運動は、ブルジョ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 今日、日本の小説に、自身の身内をも流れる同質のものを感じつつ「嫌な奴」を登場させているという一部の作家たちは、以上のような関係では、外的・内的な「嫌な奴」と作家としての自己との間にどんな関係を自覚しているのであろうか。彼等が「嫌な奴」・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・分が今日そのような娘心でいる、その娘心を誰がどのように食わせ養いしているか、いろいろ職業らしいものを持ちながら、大迫さんが、自分とはちがった境遇に今日生きつつあるより多数の娘さんの明暮に思いを拡げず、同質の友達や先輩のうちに生活の環をおいて・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
出典:青空文庫