・・・家庭円満、妻子と共に、おしるこ万才を叫んで、ボオドレエルの紹介文をしたためる滅茶もさることながら、また、原文で読まなければ味がわからぬと言って自身の名訳を誇って売るという矛盾も、さることながら、どだい、君たちには「詩」が、まるでわかっていな・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・を訳して、名訳といわれた吉田健一という名を思いおこすと、こんにちの「英国の文学」だの、父親の代弁として、ユーモアのないところに思想はなく、だから文学はないという風なくちのききかたも、何となく中間小説作家流の本来の人生の姿を語っているようでも・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・の絵が自分をつかまえないうちに、早く! 早く! そう思っている不安のように思えた。 巖本真理のおばあさんは明治初期の婦人英学者若松賤子である。このひとには「小公子」の名訳がある。おじいさんの巖本善治は、明治初期の進歩的女子教育家であった・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
出典:青空文庫