・・・吾人は貞淑なる夫人のために満腔の同情を表すると共に、賢明なる三菱当事者のために夫人の便宜を考慮するに吝かならざらんことを切望するものなり。……」 しかし少くとも常子だけは半年ばかりたった後、この誤解に安んずることの出来ぬある新事実に遭遇・・・ 芥川竜之介 「馬の脚」
・・・この点では志賀直哉の功を認めるに吝かではない。しかし、志賀直哉の小説が日本の小説のオルソドックスとなり、主流となったことに、罪はあると、断言して憚からない。心境小説的私小説はあくまで傍流の小説であり、小説という大河の支流にすぎない。人間の可・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・ 余は以上の如く根本において文芸院の設置に反対を唱うるものであるが、もし保護金の使用法について、幸いにも文芸委員がこの公平なる手段を講ずるならば、その局部に対しては大に賛成の意を表するに吝かならざるつもりである。その他の企画についても悉・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
出典:青空文庫