・・・前者は賞をもらったが、後者は家宅侵入罪その他で告発されるという話である。これはたいへんな相違である。ただ二人の似ているのは人まねでないということと、根気のいいという点だけである。 それでもし煙突男の所業のまねをしたら、そのまねという事自・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
・・・犯罪統計のうち破廉恥罪以外で投獄された人民の第一位を、新聞取締法違反によって告発された執筆者たちが占めていたのである。 二 日本の新聞の歴史は、こうして忽ち、反動的な強権との衝突の歴史となったのであるが、大・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・と法廷でよみあげる告発の文書の文句とは、まるでちがった本質と道ゆきとをもつことである。「伸子」の続篇を書きたいと思いはじめたのは、この時分からのことである。しかし、この願いは一九四五年の八月十五日が来るまで実現しなかった。「伸子」以後の・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・とってみても、日本の民主化と云われている社会現実の上に、幾重にも折りたたまっている封建の野蛮と無智がおそろしく身に迫る事件ばかりだが、なかに二人のやしない子を育てる苦しさから配給の二重どりしていたのを告発され、懲役になっている中年の女の話が・・・ 宮本百合子 「再版について(『私たちの建設』)」
・・・その嫌疑、その告発によって人々は生命さえおびやかされた。戦争放棄した日本に、いつ、戦争に反対する行為が、犯罪であるとされることになったのだろう。軍隊のないはずの日本に、いつ反軍の犯罪というものが成り立つようになったのだろう。反戦・反軍という・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・のような存在として自己を意識し」て、そこに伊藤整の人間及び文学者としての存在感が定着しきれるものならば、どうして彼自身、きわめて具体的なファイティング・スピリットをもって「チャタレー夫人の恋人」の告発状の中には、検察当局がその作品をちゃんと・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・人々が十数年前、どこか市内の土蔵の地下室にその印刷所があったことを知ったときは、スパイによってその場所があばかれ、当時活動していた重吉たちすべてに、事実とちがう誹謗の告発がされた時であった。ひろ子の文学上の友人で、その頃、印刷所関係の仕事を・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫