・・・ソヴェト同盟が、生産と公共的な勤労に従う男女の生活権を尊重して、十八歳以上の男女に等しく選挙・被選挙権を与えていることは、周知のとおりである。 日本の歴史は、惨憺たる進歩性の敗退の跡を示している。明治維新によって、名目上の民権が認められ・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・そのことに彼女たちが反対の意見を表していることは周知の通りです。こういう女の職業についての奇妙な不公平も、要するに過去の久しい間、女の職業というものについて女として求める確乎性が社会的に認められていなかったからです。女自身、ましてインテリゲ・・・ 宮本百合子 「現実の道」
この一二年来、文学的な本を読む読者の数がぐっとふえていることは周知の事実であって、それらの新しい読者層の何割かが、通俗読物と文学作品との本質の区別を知らないままに自身の購買力に従っているという現象も、一般に注意をひいて来て・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・ 周知の如く近代国家としての日本は独特な発展の過程をとり所謂開化期の文化の自由民権的傾向というものは明治二十三年国会が開かれると同時に一種の反動期に入り、今日とはその質を異にするが、官僚「官員さん」の横行時代を現出した。日清、日露の両戦・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・が日本の近代小説への道を示したことは周知である。文芸理論に於てはヨーロッパの評論、文学評価を学んで封建的善玉悪玉の観念を排し、社会と人間との現実を描くことを慫慂した逍遙が、「当世書生気質」の描法にはおのずから自身が明治社会成生の過程に生きた・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 科学と探偵小説 木々高太郎氏は、執筆する探偵小説によって賞をも得たことは周知であり、パヴロフの条件反射を専攻されている医博であることを知らぬものはない。同氏の『夜の翼』という探偵小説集が出ていて、それを読み、・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 長い時間立ったままで働く女、又は椅子にかけたなりで一日中執務しているような女の体には子宮後屈が多く、不姙その他の不幸を女と男との一生にもたらすことは周知の事実である。ソヴェトでは働く婦人の健康の特にこの点を注意して、新しく制定された工・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ フランスは周知のとおり、昨今思想的にも実践的にも民衆の進歩的な意志が益々結合せられ、活溌に向っている。そのような社会事情にかこまれながら、孤児院出のジャンが、この如き経験をなめていることにも、私たちの心は様々に動かされる。 華やか・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ このように文化が戦争の宣伝具とされた時期、いわゆる純文学はどういう過程を経たかと云えば、周知のとおり、人間本来のこころを映す文学は抹殺され、条理の立った批判は封ぜられ、遂に文化という人間だけがもっている精神活動の成果をあらわす高貴な字・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・ 周知の通り、林檎が樹から落ちるのを不思議に感じて問題としたことが、近代物理学への重大貢献となった。あたり前の現象として人々が不思議がらない事柄のうちに不思議を見出すのが、法則発見の第一歩なのである。寺田さんは最も日常的な事柄のうちに無・・・ 和辻哲郎 「寺田寅彦」
出典:青空文庫