・・・愛なき批評を呪うようになった私には、もはや気軽に他人を非難する度胸がなくなった。八 ショオとドストイェフスキイとに一種の類似がある。それは知的と心理的とに特色を有する表現法が因をなしているかも知れない。しかし私は特に彼らの内・・・ 和辻哲郎 「転向」
・・・ 苦患のゆえに生を呪うものは滅べ。生きるために苦患を呪うものは腐れ。二 ショペンハウェルの哲学は苦患の生より生い出る絶妙な歓喜への讃歌であった。 生を謳歌するニイチェの哲学は苦患を愛する事を教うるゆえに尊貴である。・・・ 和辻哲郎 「ベエトォフェンの面」
・・・を自動車に載せて上野に散策し、山奥の炭焼きは父の屍を葬らんがために盗みを働いた。いずれが孝子であるか、今の社会にはわからぬ。親の酒代のために節操を棄て霊を離るる女が孝子であるならば吾人はむしろ「孝」を呪う。 八犬伝は「浜路が信乃のもとへ・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫