・・・「プロレタリア文学なるものは、一つの歴史的な呼び名であって、言葉の正当な意味でのプロレタリア文学ではなかったという説がここに確認されているのは銘記されてよい」と。 六五―六・六〇―一頁の記述が不足で不明確であったためにこういう読みとりか・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学の存在」
・・・ 大陸文学という呼び名が浅い目先の音響できこえるのは、年月が短いばかりでなく、文学的業績が乏しいばかりでなく、大陸というものがその生活で示している巨大で複雑な主題の深さをリアルにつかんでいないことや、その主題が文学として命をもった表現を・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・ 息子を持った中年の女を他に呼びようないので便宜上の呼び名であるのだろうか。せきは、一言の下に、「玄人さお前さん、一目見たってわかるじゃないか」と断定した。石川は、南洋の無人島で終日遙かな水平線ばかりを見詰めていたときから、上瞼が少・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・ だけれども、親愛なるジャガイモ、私の祖母たちはカンプラと東北の呼名で呼んだ馬鈴薯の種を、どこへまいたら、育って花を咲かせて、米の足しになるようなみのりかたをするだろうか。もしも、うちでやるとすれば、東側の竹垣の根へ少々その東からの光線・・・ 宮本百合子 「昔を今に」
河原蓬と云う歌めいた響や、邪宗の僧、摩利信乃法師等と云う、如何にも古めかしい呼名が、芥川氏一流の魅力を持って、私の想像を遠い幾百年かの昔に運び去ると同時に、私の心には、又何とも云えないほど、故国の薫りが高まって来た。 ・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・ 只その呼名をきいただけで顔が熱くなるほど真面目に私が愛する芸術をよごさずに置きたいと思う。 ことに文学の様なものはどれだけ人間の生活に大きな影響をおよぼすかははかり知る事が出来ず又それがあんまり見えすいたら私達はおびえなければなら・・・ 宮本百合子 「無題(二)」
・・・ お嬢さんという境遇にいる若いひとが、この頃は自分たちにつけられるそういう呼び名を嫌って来ていることも面白い。何かそこに安住していられないものがあって、もっと虚飾のない、むき出しの、だが愛らしくぴちぴちした娘という響を自分たちの若さの表・・・ 宮本百合子 「若い娘の倫理」
出典:青空文庫