・・・然も一種の世間師だから期限付のファッシストを宣言したところ思わず人を哄笑させる。 二 直木三十五の宣言を読んだ時、自分は一つの昔噺を想い出した。 ある恐ろしい山道で一人の百姓が天狗に出遭った。天狗は既に・・・ 宮本百合子 「ブルジョア作家のファッショ化に就て」
・・・ これは、みんなの哄笑と猛烈な抗議的拍手をよび起した。 議事録はと見れば、そもそも一九三〇年度の作家同盟の文学活動を要約すれば云々というスローガンが真黒に塗り消されているばかりではない。三一年の活動方針のところでは、「その方針を決定・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・日曜日の午後は半ズボンで過す英国人らしく哄笑しつつM氏は説明するだろう。 ――今更そんなものいくら見たってしょうがありゃしませんよ。今日では英国人自身が紳士なんて言葉は便所にしか役に立ってないって云ってる位だもの。……ああ云うところはね・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・ ネーにはナポレオンのこの奇怪な哄笑の心理がわからなかった。ただ彼に揺すられながら、恐るべき占から逃がれた蛮人のような、大きな哄笑を身近に感じただけである。「陛下、いかがなさいました」 彼は語尾の言葉のままに口を開けて、暫くナポ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・私の Aesthet は Sollen を肩からはずして、地に投げつけて、朗らかに哄笑した。私は手先が自由になったことを感じた。一夜の内に世界は形を変えた。新しい曙光は擅な美と享楽とに充ちた世界を照らし初めた。かくて私は彼らの生活に Aes・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫