・・・に復活体を着せられて光の子として神の前に立つ事である、而して此事たる現世に於て行さるる事に非ずしてキリストが再び現われ給う時に来世に於て成る事であるは言わずして明かである、平和を愛し、輿論に反して之を唱道するの報賞は斯くも遠大無窮である。・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・日本の青年男女に、はじめて交際の自由が唱道せられた時分である。それまでは、男女席を同うせずといったような堅苦しい旧道徳の束縛が、互に物を言ったり、交際するのをすら障げていた。これに対する反動は、たゞちに、恋愛至上主義にまで行ったのである。・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・ 昔はとにかく今日では我邦ですらも科学というものの功利的価値は、理解されたというよりむしろ無理解に世間で唱道されている。その当然の結果として科学者はそういう意味で尊重されている。従って科学者は自分の研究以外の事で常に忙しい想いをするよう・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・この同じピタゴラスがまた楽音の協和と整数の比との関係の発見者であり、宇宙の調和の唱道者であったことはよく知られているようであるが、この同じピタゴラスが豆のために命を失ったという話がディオゲネス・ライルチオスの『哲学者列伝』の中に伝えられてい・・・ 寺田寅彦 「ピタゴラスと豆」
・・・しかも個人主義なるものを蹂躙しなければ国家が亡びるような事を唱道するものも少なくはありません。けれどもそんな馬鹿気たはずはけっしてありようがないのです。事実私共は国家主義でもあり、世界主義でもあり、同時にまた個人主義でもあるのであります。・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・を一つの典型とするのみで、土の文学を唱道する作家たちの活動や大正年代に吉江喬松・中村星湖・犬田卯等によってつくられた農民文学会の活動などが、特にめざましい文学上の収穫を齎して来ていないことは、注目すべきことである。農民文学のかような歴史の断・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫