・・・処へ、語学校が廃されて商業学校の語学部になる。それも僅かの間で、語学部もなくなって、その生徒は全然商業学校の生徒にされて了う。と、私はぷいと飛出して了った。その時、親達は大学に入れと頻りに勧めたが、官立の商業学校に止まらなかったと同様に、官・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・高等商業の標本室も見てきた。馬鈴薯からできるもの百五、六十種の標本が面白かった。この公園も丘になっている。白樺がたくさんある。まっ青な小樽湾が一目だ。軍艦が入っているので海軍には旗も立っている。時間があれば見せるのだがと武田先生が云った・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・しかし、次の事実は事件の核心に関係しているにもかかわらず、商業新聞には発表されていません。それはこういう事実です。事件当夜、立川市の警察署長は立川国警から電話をうけて、八時半頃三鷹附近で事件がおきるから注意して警戒にあたれと、命令をうけたと・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・そして、こんにち商業新聞の頁の上に、昭和初頭と同じように講談社、主婦之友出版雑誌の大広告を見るとき、この評論集におさめられている「婦人雑誌の問題」の本質が、更に複雑な隷属の要因を加えて、わたしたちのこんにちの文化問題であることを知る。「今日・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・が出版された当時、商業出版の上で若い作者が不安定な利用にさらされていた当時、わたしは「若い女性の著書二つ」のなかで、彼女のおかれている客観的主観的な困難にふれたのであった。その時分「煉瓦女工」の作者は、わたしの書いたその文章はおそらく読まな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・そして、第三に、よむものの心をうつことは、商業的な文化の上では猟奇のヒロインのように描き出される彼女たちが、電車にのると、パン助野郎、歩いて行け、とののしられたりするということである。娘たちは、真赤にルージュをぬった唇から、なるたけ歩くよう・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・早くから商業が発達し、学問が進み、人間の独立と自由とを愛する気風が培われていたライン州では、一七八九年にフランスの大革命が起った時、ジャコバン党の支部が出来、ドイツ人でフランス革命のために努力した人々が沢山あった。ナポレオンの独裁がはじまっ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ハンザ同盟に加っていたヨーロッパのいくつかの自由都市は、それぞれのわが市から出発して商業の上で世界を一まわりしていたばかりでなく、当時の文化を、めいめいのところで最高にまで開花させていたのであった。 寧ろ、現代の資本主義が強く文化分野を・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・瀝青ウラン鉱からラジウムを引き出すことに成功した彼らが、その特許を独占して商業的に巨万の富を作ってゆくか、それとも、あくまで科学者としての態度を守ってその精錬のやり方をも公表し、人類科学の為に開放するか、二つの中のどちらかに決定する種類のも・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・「私たちの発見に商業的な未来があるとしてもそれは一つの偶然で、それを私たちが利用するという法はありません。」ラジウムが病人を治す役に立つからと云って、そこから儲けることなどマリヤには思いも及ばないことであったのです。ピエールとマリヤは科学者・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
出典:青空文庫