・・・生活を喜んで営むべきである。正しいと信じたことは、ちゃんと言い、又行うべきである。人間らしい生活を作るために色々の条件を改善して行くべきである。そういう声がどこでもきかれるようになりました。それは全く当然であると思います。何のために戦ってい・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・音楽が風や濤声や木々の葉ずれのような自然現象ではなくて、社会生活を営む人間の声であることが深く深く理解され、身をもって経験されて、はじめて将来の音楽発展への希望の土台も与えられる訳です。〔一九三八年一月〕・・・ 宮本百合子 「期待と切望」
・・・もしも彼女が、上成績で学位をとったことを、これから安楽な奥さん生活を営むためにより有利な条件として利用しようとでもする俗っぽい性根であったなら、決してピエール・キュリーのような天才的な、創意にみちた科学者の人柄と学問の立派さを理解することは・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・地を這う小虫も麗しい五月の 地苔も皆、すぐ 体の囲りでささやかな 生を営むのだ。高く 高く 安定のない魂は寂しい。救われる道がなく寥しい。空は円く高く 地は低く凹凸を持ち人は、頭を程よい空間に保って・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・社会の一員として有機的生活を営むと云う意識は、米国婦人に於て殊に強く認められると存じます。此点に於ても彼女等は、私共の持たない、或は持たなかった賢さを持って居るのでございます。 C先生。 私は此処までで大体米国婦人の優越点を肯定した・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・家の、大体の建築を自分でする等と云う事は、不可能と知れていますが、少くとも、庭園に対する注意、室内装飾の或る部分は、家を営む者達の手――心でどうかなると思われます。 植木屋を手伝い、男――良人や男の子等は、花壇作り樹木の植つけ等を、分に・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
・・・一九一九年ヴェルサイユ条約成立と年を同じくして、新憲法による男女二十歳以上の一般、平等、直接、無記名投票権を認めていること、および、ソヴェト・ロシアが一九一七年十一月以来生産的公益的労働によって生計を営む十八歳以上の一切のものに選挙権を認め・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・自主的な判断というものと、自主的に社会生活を営む自由とを人民一般が奪われていたとき、どうして知識人が、知識人たり得たであろう。すべての知識、すべての合理的探究、価値評価としての批判は封鎖されていた。在るものは、権力の強制と、その強制を可能な・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・それ故、徒に新奇を競うて、外国人の営む生活の形骸を真似るのは、全く笑うべく悲しむべきことです。 併し、一国の文化、社会状態を観察した場合に、何時も、その裏面、消極的方面のみに注目するのは、果して妥当な態度でしょうか。 他人の話を聞き・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・その為に、素朴な、実質的な、草の如き単純さと同時の真に充実した生活を営むべきことと、営みたいことの希願だけは強くあった。 故に、Aとの結婚は自分を、人間として改造し、見えない無数のアフェクテーションをすてさせるだろうと予覚した。 寧・・・ 宮本百合子 「小さき家の生活」
出典:青空文庫