・・・そうした時に手帳をあけて自分の書いてある暗号のようなものを見ると、ほとんどなんの意味をも成さない囈語でなければ、きわめて月並みないやみな感想に過ぎなかった。どうしてこんなつまらない考えがあれほどに自分を興奮させたか不思議に思われるのであった・・・ 寺田寅彦 「球根」
・・・甚だ杜撰なディレッタントの囈語のようなものであるが、一科学者の立場から見た元禄の文豪の一つの側面観として、多少の参考ないしはお笑い草ともならば大幸である。 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・その声が思ったより高く一間の中に響き渡ると、返事をするようにどの隅からもうめきや、寝返りの音や、長椅子のぎいぎい鳴る音や、たわいもない囈語が聞える。 フィンクは暫くぼんやり立っていた。そしてこう思った。なるほどどこにもかしこにも、もう人・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
出典:青空文庫