・・・ 昼になっても荷の回送はなかった。仁右衛門は自分からいい出しながら、面白くない勝負ばかりしていた。何方に変るか自分でも分らないような気分が驀地に悪い方に傾いて来た。気を腐らせれば腐らすほど彼れのやまは外れてしまった。彼れはくさくさしてふ・・・ 有島武郎 「カインの末裔」
・・・雷の音が次第に急になって最後にドシーンと落雷したときに運拙くその廻送中の品を手に持っていた人が「罰」を受けて何かさせられるのである。 パリに滞在中下宿の人達がある夜集まって遊んでいたとき「ノーフラージュ」をやろうと云い出したものがあった・・・ 寺田寅彦 「追憶の冬夜」
・・・そこからハガキが来てね、上落合へ一遍行って回送されて来ているんだけれど、お召の著物が一枚五円で入っているのが明日限りで流れるって知らして来たんだけれど。――上落合に住んでいたこともあり、そういうところに縁もなくはないから、あした流れるという・・・ 宮本百合子 「まちがい」
出典:青空文庫