・・・一九四八年のなか頃から、国内にたかまってきている民族自立と世界平和と、ファシズムに反対する文化擁護の機運は、決して一部の人の云っているようにジャーナリズムの上の玩具ではない。こんにち、平和を支持し、ファシズムに反対する作家たちの一人一人が、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・チピチしている子供ら、新しい世代として成長しつつある子供らの新鮮で、こだわりなくて、そしてよその国のどこにもない社会的な保護のもとに小さな人々として生きつつある姿は、わたしを感動させずにおかなかった。国内戦や飢饉時代ののちに、夫婦がそうして・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・こんにちの歴史の下では、単にロシア国内の事情というにとどまらず、世界の人民の業績の一つの典型として感じとられるこれらの印象記や報告が一冊の本にまとまって出ることはうれしい。 発表当時、会話が棒ではじまっていたり、くせのあるてにをはがつか・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・ 今ソヴェト同盟で出ている、あらゆる漫画諷刺雑誌の主題は、資本主義国支配階級への攻撃、国内のブルジョア残存物への挑戦、次にプロレタリア生産、文化の自己批判が、扱われている。 然し実際にやって見ると、階級的自己批判としての諷刺文学は、・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・総選挙という方法は民主の方法であろうが、その方法を通じて反映された今日の日本の現実は、どんなに国内の保守の権力が根づよく、組織的で、日本が民主化して行こうとする進路をふさいでいるかという事実が、外人記者の観察にもはっきり語られたのである。総・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ 刻々とすさまじく推移せる世界と国内社会の動きを直感して、おそらくはあらゆる作家が、自分の存在について再認識を求められてきた。戦争は文化を花咲かせるものでないから、文筆生活者として生活の不安もつのった。それからの脱出として、既成の作家た・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・今の分業の世の中では、批評というものは一の職業であって、能評の功を成就せんと欲するには、始終その所評の境界に接して居ねばならぬ、否身をその境界に置いて居ねばならぬものだ。文壇とは何であるか。今国内に現行している文章の作者がこれを形って居るの・・・ 森鴎外 「鴎外漁史とは誰ぞ」
・・・ この間、彼のこの異常な果断のために戦死したフランスの壮丁は、百七十万人を数えられた。国内には廃兵が充満した。祷りの声が各戸の入口から聞えて来た。行人の喪章は到る処に見受けられた。しかし、ナポレオンは、まだ密かにロシアを遠征する機会を狙・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・ 鎖国は、外からの刺戟を排除したという意味で、日本の不幸となったに相違ないが、しかしそれよりも一層大きい不幸は、国内で自由な討究の精神を圧迫し、保守的反動的な偏狭な精神を跋扈せしめたということである。慶長から元禄へかけて、すなわち十七世・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・この皇室を守るために、国内の他の勢力に対して反抗するというような情熱は、切実に起こりようがない。それよりも我々が切実に感じたのは、外国の圧迫に対して日本帝国を守る情熱である。三国干渉は朧ろながらも子供心を刺戟した。露国の圧迫に対しては、おそ・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫