・・・翼賛会の初代の文化部長岸田国士、つづいて同じ位置についた高橋健二その他の人々は、文化の擁護のために何事もなさなかった。一九三〇年代のはじまりに「文学の純芸術性」を力説した菊池寛、中村武羅夫等の人々が、この時期に率先して文化の軍事的目的のため・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・例えば、岸田国士等によって言われている、演劇アカデミイの問題で村山知義氏は、基本的な技術を与えることでは、アカデミイも新しい演劇のために何物かを与えるであろうがと言っておられる。その基本的技術というのも、果してブルジョア的な新劇と、私たちが・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・林房雄氏は、真面目な文学者評論家は当今意識的に文壇を離れたがっている、と云い、岸田国士氏は文壇が重荷になっている、と明言しておられる。そして、文学が大衆性とか指導力とかを持つようになるためには、実業家・官吏・軍人等の真面目な要求と共通するも・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・岸田国士氏は、日本人が列のきびしさを知らず、前へわりこまれてもそれを黙っていることを非難しておられた。これを逆に云えば、列というものは、それが列だからという理由で、見知らない人が見知らない人に向って、列からはみ出してはいけません。勝手に前へ・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
・・・例えば中岡良一を賞讃して、彼はまことに国士であった、志士であった、というようなことを言い出さぬとも限らぬ。それは暗殺の煽動である。巡査が来て彼を過激思想宣伝者、直接行動煽動者として警視庁へひっぱって行く。 どうもこれでは困る。それよりも・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫