・・・面白ずくに三馬や京伝や其磧や西鶴を偉人のように持上げても、内心ではこの輩が堂々たる国学または儒林の先賢と肩を列べる資格があるとは少しも思っていなかった。渠らの人物がどうのこうのというよりはドダイ小説や戯曲を尊重する気がしなかった。坪内逍遥や・・・ 内田魯庵 「二葉亭余談」
・・・これはおげんがまだ若い娘の頃に、国学や神道に熱心な父親からの感化であった。お新は母親の機嫌の好いのを嬉しく思うという風で、婆やと三吉の顔を見比べて置いて、それから好きな煙草を引きよせていた。 その朝から三吉はおげんの側で楽しい暑中休暇を・・・ 島崎藤村 「ある女の生涯」
・・・母の実家というのは西村と申し、千葉の佐倉宗五郎の伝説で知られている堀田藩の士で、祖父の代は次男だったので、武術の代りに好きな学問でもやれと言って国学、漢学、蘭学などを専門にやっていたらしい様子です。 経済的には貧乏であったらしい話で、明・・・ 宮本百合子 「わが母をおもう」
出典:青空文庫