・・・これは国鉄にはっきり現れている。こういう日本の政府のやりかたは、変えられなければならないものである。〔一九四六年八月〕 宮本百合子 「青田は果なし」
・・・今日、豊年という日本の秋には、深刻な失業の問題が私たちをおびやかしていてその対象は先ず婦人青年です。国鉄を見てもそれはすぐわかります。この間の踊を熱中したのはどんな人々でしたろう。若い婦人若い男の人たちでした。太鼓は鳴ります。うたがきこえま・・・ 宮本百合子 「朝の話」
・・・ 日本のファシズムは、本年に入ってから、特に国鉄をはじめとして大量の人員整理をはじめてから、ひどい勢いで各方面で人民生活をかみやぶりはじめました。 わたしたちの民族独立への希望や、文化の自立への希望――つまり独立した社会人として当然・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 労働法が出来たけれども、国鉄従業員が尤もな待遇改善を求めると、当局はそれを拒むことの出来ない代りに、忽ち、運賃値上げをして、人民の負担に転化する。逓信院の値上げにしても同様である。何十万人という従業員は、やっといくらか給料がよくなった・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・ 国鉄整理にからんでおこった下山国鉄総裁の死は、最大限に政府の便宜のために利用された。共産党に関係のある兇悪な犯罪事件のように挑発され、一部の知識人さえその暗示にまきこまれた。ところが他殺でないことがわかったきょうでも、まだ死者に対・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・一緒につかまった男の同志が人馴れた口調で看守に国鉄従業員の勤務状態などを、話しかけている。それにかこつけて、巧に必要な連絡を女の同志に向ってつけているらしい。女の同志はじっとそれに耳を傾け「ふ、あんなこと云ってる」などと頼もしそうに笑った。・・・ 宮本百合子 「刻々」
一九四九年の日本の夏は、勤労人民のすべてにとって、切実な生存擁護のためのたたかいの季節としてはじまった。 七月四日に国鉄は九万五千人の整理を発表し、組合側はそれに対してただちに抗議を組織化した。国鉄当局は九日―十一日の・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ 詩の方面では、国鉄の詩人達が職場の詩人としての成果をしめして、ますます発展しようとしていることや、勤労者によって書かれた戯曲が自立劇団の上演目録に登場しはじめたことなどを見逃すことはできません。古い天皇制的な祝日が民主的な人民の祝日に・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
・・・その他労働者によってかかれる作品がでてきたし、全逓の文学コンクール、国鉄の集団的文学活動など新しい民主的文学の芽がもえだした。けれどもその半面では、ドストイェフスキーばりの椎名麟三の作品が流行しはじめ、また新日本文学会と同時に活動をはじめた・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・ ことしの夏は、殺気のみちたいやな夏であった。国鉄の整理については、政府も、ふりあげたわが刀の影におびえたように非常事態宣言の用意があるとか、「共産党は八月か九月に暴力革命をやるもくろみだ」とか、政府への反抗に先手をうつつもりで、かなり・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫