・・・「あったとも、君――後で収容当時の様子を聴いて見ると、僕等が飛び出した川からピー堡塁に至る間に、『伏せ』の構えで死んどるもんもあったり、土中に埋って片手や片足を出しとるもんもあったり、からだが離ればなれになっとるんもあった。何れも、腹を・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・ 掘出し物という言葉は元来が忌わしい言葉で、最初は土中冢中などから掘出した物ということに違いない。悪い奴が棒一本か鍬一挺で、墓など掘って結構なものを得る、それが既ち掘出物で、怪しからぬ次第だ。伐墓という語は支那には古い言葉で、昔から無法・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・四月二十八日にはそれまで館の居間の床板を引き放って、土中に置いてあった棺を舁き上げて、江戸からの指図によって、飽田郡春日村岫雲院で遺骸を荼だびにして、高麗門の外の山に葬った。この霊屋の下に、翌年の冬になって、護国山妙解寺が建立せられて、江戸・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫