・・・御徒目付からは、御徒組頭久下善兵衛、御徒目付土田半右衛門、菰田仁右衛門、などが駈けつける。――殿中では忽ち、蜂の巣を破ったような騒動が出来した。 それから、一同集って、手負いを抱きあげて見ると、顔も体も血まみれで誰とも更に見分ける事が出・・・ 芥川竜之介 「忠義」
・・・「おい土田さん。」「三宅! 三宅は居るか! 柴田! 柴田! 森!」 助けを求める切れ/″\の呻きが井村の耳に這入ってきた。彼も仲間の名を呼んだ。湿っぽい空気にまじって、血の臭いが鼻に来た。女の柔かい肉体が血と、酸っぱい臭いを発し・・・ 黒島伝治 「土鼠と落盤」
・・・宅には東京平河町の土田という家で製した紙巻がいつも沢山に仕入れてあった。平河町は自分の生れた町だからそれが記憶に残っているのである。ピンヘッドとかサンライズとか、その後にはまたサンライトというような香料入りの両切紙巻が流行し出して今のバット・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
出典:青空文庫