・・・ば彼また金をもって自由を買いたいは理の当然されば男傾城と申すもござるなり見渡すところ知力の世界畢竟ごまかしはそれの増長したるなれば上手にも下手にも出所はあるべしおれが遊ぶのだと思うはまだまだ金を愛しむ土臭い料見あれを遊ばせてやるのだと心得れ・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・の五句のごときも、事によると一種の土臭いにおいを中心として凝集した観念群を想像させる。 岱水について調べてみる。五十句拾った中で食物飲料関係のものが十一句、すなわち全体の二十二プロセントを占めている。こういうのを前記の観念群と同一視して・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・そして庭の隅々からは枯草や落葉を燬く烟が土臭いにおいを園内に漲らせていた。 わたくしは友を顧みて、百花園を訪うのは花のない時節に若くはないと言うと、友は笑って、花のいまだ開かない時に看て、又花の既に散ってしまった後来り看るのは、杜樊川が・・・ 永井荷風 「百花園」
・・・はてな、どうもこの水は変に土臭いぞ。どこかのまっ黒な馬鹿ァが頭をつっ込んだと見える。えい。仕方ない。我慢してやれ。」 そして蠍は十分ばかりごくりごくりと水を呑みました。その間も、いかにも大烏を馬鹿にする様に、毒の鉤のついた尾をそちらにパ・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
出典:青空文庫